通常、帰化申請をするときは、国籍法5条が定める要件をすべて満たす必要があります。しかし、国籍法6条・7条・8条にはその要件の緩和が定められています。その要件が緩和された帰化を簡易帰化といいます。
簡易帰化①
【国籍法6条】 次の各号に該当する外国人で現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その者が国籍法5条1項1号(住所要件)を備えないときでも、帰化を許可することができる。 1号 日本国民であった者の子(養子を除く)で引き続き3年以上日本に住所又は居所を有するもの 2号 日本で生まれた者で引き続き3年以上日本に住所もしくは居所を有し、又はその父もしくは母が日本で生まれたもの 3号 引き続き10年以上日本に居所を有する者 |
以上に該当する者が帰化するときは、国籍法5条1項で定められていた
住所要件つまり
「引き続き5年以上日本に住所を有すること」は緩和されます。ただし、緩和されるのは住所要件だけであり、それ以外の能力要件や生計要件などは必要になります。
では、国籍法6条について簡単にみていきましょう。
▼日本国民であった者の子の場合「日本国民であった者の子」とは、
元日本人の子ということになります。
「元日本人?」と首をかしげる方もいらっしゃるかと思いますが、例えば、イタリア人と結婚後、イタリア国籍を取得して日本国籍を喪失したAさんが元日本人ということになります。
日本は、二重国籍を原則禁止していますので、日本人が外国の国籍を取得する場合には、日本国籍を捨てなければなりません。そして、Aさんから生まれた子Bが
「日本国民であった者の子」であり、Bが日本国籍に帰化するときは、「引き続き5年」ではなく「引き続き3年以上日本に住所又は居所を有する」ことにより帰化が可能となります。3年以上の就労期間も不要になります。
▼日本で生まれた者(日本で生まれた外国人)日本で生まれた外国人で引き続き3年以上日本に住所もしくは居所を有しているものは、住所要件が緩和されます。
ただし、能力要件は緩和されませんので、日本で生まれ、3年以上「居所」を有しているとしても、18歳以上でなければ帰化は許可されません。つまり、日本で生まれて3歳になっても帰化は許可されません。
▼日本で生まれた者でその父もしくは母が日本で生まれたもの「日本で生まれた者でその父もしくは母が日本で生まれたもの」とは、日系3世のことをいいます。彼らは現に日本に住所を有するだけで「住所要件」がクリアされます。「引き続き何年以上日本に・・・」という要件は必要ありません。
▼引き続き10年以上日本に居所を有する者「引き続き10年以上日本に居所を有する者」は、「引き続き5年以上日本に住所を有すること」という住所要件が不要とされます。
ポイントは「住所を有する」ではなく「居所を有する」と定められているところです。
「住所」ではなく「居所」とあるので、仕事をしているかどうかは問題となりません。ただし、注意が必要なのは、国籍法6条が緩和するのは、住所要件だけであり、能力要件や生計要件は帰化の条件となります。
よって、引き続き10年以上日本に住んでいても、日本での収入がアルバイト程度で不安定な場合は、生計要件を満たさない可能性が高くなります。もっとも、生計要件は「配偶者その他の親族の資産」も加味されるので、それとアルバイトの収入を足して生計要件をクリアするならば問題のないことです。
▼簡易帰化②
【国籍法7条(日本人の配偶者がする帰化)】 日本国民の配偶者たる外国人で引き続き3年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その者が同法5条1項で定める「住所要件」「能力要件」を備えないときでも帰化を許可することができる。 日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から3年を経過し、かつ、引き続き1年以上日本に住所を有するものについても同様とする。 |
国籍法7条に該当するときは、国籍法5条1項で定められていた「住所要件」と「能力要
件」が緩和されます。ただし、緩和されるのは上記2つの要件だけであり、「生計要件」等は帰化の要件となります。
■在日3年以上の外国人が日本人と結婚した場合例えば、大学4年間を日本で過ごし、日本の企業に就職して1年も経たないうちに結婚した外国人が、婚姻届提出後の1ヵ月後に帰化申請をした場合でも許可される可能性があります。ただし、あくまでも「住所要件」「能力要件」が緩和されるだけであり、「生計要件」などは課されるので注意が必要です。
■婚姻後3年経過、在日1年以上の場合婚姻期間が3年以上ある場合には、3年間日本に居住しなくても、1年間日本に住んでいれば帰化申請することができます。
※ただし以上の2つの条件は、最低限のものであり、法務大臣の自由な裁量によって「まだ日本に基盤がおかれていない・定着していない」と判断された場合は、法文の条件に合致していても申請を今少し待ってからにしてくださいと言われる可能性もあります。
▼簡易帰化③
【国籍法8条】 次の各号の一に該当する外国人について、法務大臣は、その者が国籍法5条1項1号、2号および4号の条件を備えないときでも、帰化することができる。 一 日本国民の子で日本に住所を有するもの ※養子を除く 二 日本国民の養子で引き続き1年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時本国法により未成年であったもの 三 日本の国籍を失った者で日本に住所を有する者 四 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き3年以上日本に住所を有するもの |
国籍法8条の1号から4号に該当する者は、国籍法5条の要件である「住所要件」「能力要件」「生計要件」が不要となります。
▼日本国民の子で日本に住所を有するもの上記に該当する者は、「住所要件」「能力要件」「生計要件」が不要となります。
どのような方が該当するのかというと「日本人の実子だが国籍選択をしていなかった子」「日本国籍に帰化した外国人の実子」で日本に住所を有するものが該当します。
国籍法3条1項(認知された子の国籍の取得)の国籍取得届では、子が20歳未満の場合に限られるため、その救済策として国籍法改正後も残されている条文といってもいいかと思います。
つまり、日本人父から出生後に認知された20歳以上の子でも、国籍法8条1号により日本国籍を取得することもできるということです。しかし、「素行要件」「国籍要件」「思想要件」などは当然に帰化要件の判断材料となります。
▼日本国民の養子の帰化について日本国民の養子の場合は、「引き続き1年以上日本に住所を有し」かつ「縁組の時本国法により未成年であったもの」であれば、「住所要件」「能力要件」「生計要件」が不要となります。
▼日本の国籍を失った者で日本に住所を有する者「日本の国籍を失った者」とは、例えばイタリア人と結婚し、イタリア国籍を取得したことにより日本国籍を失った者のことをいいます。
このような者が再び日本国籍を取得する場合は、「住所要件」「能力要件」「生計要件」が不要となります。「住所要件」が不要となるといっても来日後すぐに帰化が許可されるように思われますが、実務上は、来日後少なくとも半年程度が経過してから帰化申請が受付られるようです。
そして、帰化の審査は1年近くかかるので、実際に帰化が許可されるのは、来日してから1年半くらいはかかると覚悟した方がよろしいかと思います。
▼日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き3年以上日本に住所を有する者上記に該当する者も「住所要件」「能力要件」「生計要件」が不要となります。